Punk Doll / パンク人形 (日本語訳:テル・ノヂ)
Last week I bought my favorite niece a cute little doll from a punk toyshop on the Kings Road.
When you twist the safety pin in her rosy cheek she vomits and shouts: fuck, fuck, in a tinny voice.
ピンクの頬に刺さった安全ピンをつねるとゲロしながらチャチな声で叫ぶんだ:ファック、ファック、ってね。
The doll is pretty strange too. - Roger Mcgough
とても不気味な人形なんだ。 - ロジャー・マクグー
英国のロジャー・マクグーによるこの散文詩は、1978年に出版されたジャーナリストのヴァル・ヘネシーの、ロンドンでパンクのギグやクラブに集まる奇抜なファッション、メイクアップ、髪型、アティテュードに身を包んだパンクスの若者達に着目した本 In The Gutter に記載されていた詩で、絶版となったこの本は写真やインタビュー満載で当時のファッション史をも顧みることができる貴重な資料として今も尚高額で取引されている。
常日頃からこの詩を題材にした人形を作りたいと、当然モチーフはセックス・ピストルズの親衛隊ザ・ブロムリー・コンティンジェントの一員スー・キャットウーマン以外あり得ないと思っていた。
猫を模倣したそのアイコニックな髪型のことを聞かれたスー・ルーカス AKA スー・キャットウーマンは、毎朝ジェルで固めねばならないことが面倒で、いっそのこと真ん中を剃ってしまえば手間が減ると思い立ったことがきっかけだった、と話している。
興味深いのは、その髪型やファッションが決して無政府主義的政治思想や稚拙な反抗心や暴力性、大衆への冒涜とかとは全く無縁であり、もっと身近な基本的人権、個人の表現の自由を静かにファッション的ヴィジュアルで主張していることに他ならない、と彼女が明言しているところだ。
女王陛下をモチーフにしたり、何かと策略を練った策士的なマルコム・マクラーレンや、生活や政治への不満を歌った牧歌的なクラッシュとは対照的で、反抗ではなく、表現の自由というプライマルな言い方をしたスーの姿勢やパンクを超えた概念・存在感は、バンドメンバー、アーティストでもないにもかかわらず、ある意味ピストルズのメンバー以上にピストルズだったとも言える。
当時誰よりもお洒落で抜群なファッションセンスを持っていただけでなく、そういった純粋性こそがパンク・アイコンとしてスーの姿がいつまでも忘れられずにいる所以なのかもしれない、ハートからの行動は特別専用電話のように直接人々の心に届く。
後に彼女は二人の子供を育て上げ、今もロンドンで静かに暮らしている。
Punk Doll Tattooed Barbie “Soo Mcgough”, H330mm x W100mm x D100mm, August 2022.
Unlike Malcolm McLaren, who was often scheming and using Queen Elizabeth as a motif, or the idyllic and protest-driven Clash, Sue, with her primal emphasis on freedom of expression rather than rebellion, and her presence transcending the concept of punk, stood out. Despite not being a band member or artist in the conventional sense, one could argue that she was more 'Pistols' than the members of the Sex Pistols themselves.
Later in life, she raised two children and continues to live quietly in London.
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